2021.12.29

土壇場の大逆転

今年の2歳馬戦線は、ポスト・ディープインパクト&キングカメハメハの後継争いが大きなテーマでしたが、昨日のJRA最終日、中山競馬場で行われたG1ホープフルSは今年最後の2歳戦でした。このレースの直前まで、2歳リーディングサイアーの行方は混沌としており、獲得賞金額がホープフルS1着賞金7000万円の範囲内の差で、先頭を走るエピファネイア、早逝が惜しまれるドゥラメンテ、後継有力と目されるロードカナロア、王者ディープインパクト、新進気鋭のドレフォンまで5頭が一塊りでランキング上位に密集していました。最後の最後、ホープフルSの結果次第では2歳種牡馬チャンピオンの行方が左右される、しびれるようなスリリングな一戦となりました。

ご存じのように結果は、有馬記念ジョッキーとなったばかりの若武者・横山武史騎手が操るキラーアビリティが悠然と直線坂上で抜け出し、昨年の凱旋門賞ジョッキーに輝いたクリスチャン・デムーロ騎手が“荒馬ならし”のように巧みにジャスティンパレスを乗りこなし2着に突っ込みました。ディープインパクト産駒の鮮やかワン・トゥーフィニッシュでした。この賞金加算によりディープインパクトは、リーディング4位からゴボウ抜きを演じて一瞬で首位に躍り出ます。後のない土壇場での大逆転!ここ一番での強さ、底力には恐れ入るばかりです。“帝王”の名は伊達じゃありません。

ディープインパクトは初年度産駒から数えて競走年齢に達したのは合計12世代ですが、そのうち2歳リーディングサイアーに実に11度輝いています。“不覚”は、2015年に快速メジャーエンブレムなどを出して天性の早熟血統を開花させたダイワメジャーとの一騎打ちに苦杯を喫した2015年のたった一度だけでした。レース総数が限られており、賞金の高い重賞も少ない2歳戦線で王座を張り続けるのは、ディープ自身が今回演じた“一発大逆転”の離れ業を見るまでもなく相当に難易度が高い骨の折れる大仕事です。加えて、ディープインパクトに遺された世代は、明ければ2歳になる20年生まれの登録数6頭だけ。もうリーディング争いは無理です。このラストクロップをもって、ディープインパクトの偉大な歴史にひとまず幕が下されることになります。

年が変われば、ディープもキンカメもいない2歳戦へとシーンが大きく転換します。来季は種付料1800万円と我が国のトップサイアーに猛進するエピファネイアの時代が幕を開けるのでしょうか?ここまで3世代で重賞10勝は同期のキズナ15勝と距離を選ばないオールマイティ性には一歩譲りますが、頂上レースであるG1に限ればキズナがエリザベス女王杯の1勝のみにとどまっているのに対して、エピファは牝馬三冠馬デアリングタクト、皐月賞、天皇賞(秋)、有馬記念と世代を超えた現役最強馬ご存じエフフォーリアなど7勝をゲットしています。恐るべき一発長打の底力です。年々、昇竜の勢いで高騰する種付料にもかかわらず、来季も既にブックフル状態と馬産地の人気は上々で、ファーストクラスの繁殖牝馬を集めているようです。新種牡馬チャンピオンを戴冠したドレフォンや同2位のシルバーステートなどにも華やかなスポットライトが当たっています。“ディープ&キンカメ後継”争いは来年も引き続き熾烈さを増しそうです。