2021.12.15

日本の宝=SSクロス

不滅の種牡馬王ディープインパクト亡き後の王座を巡っては、ディープの存在が余りにも巨大すぎるがゆえに、後継と言われても実感が伴わないのが正直なところです。ディープが没して2年が経ち、後継候補の有力な1頭だったドゥラメンテが早逝するなど、ガッカリさせられる不幸な出来事もありました。その血統表を何気に眺めるだけで、社台グループやノーザンファームの大河ドラマのような、山あり谷ありの長大な歴史が手に取るように俯瞰できてしまう素晴らしい血統馬でした。ディープといいドゥラメンテといい、王宮の遷移というものは、古代からの歴史が物語るように、残されたもの達に超え難い障壁や謎に満ちた難問を遺すものですね。

しかしエピファネイアが3世代連続でG1馬を輩出し、偉大なディープインパクトが遺した超えられない壁への挑みに一歩を踏み出しました。3頭でG1を6勝する驚異的なパフォーマンスを爆発させていますが、その共通点は3頭が3頭ともサンデーサイレンスのクロス持ちだという点にありそうです。エピファネイアの母シーザリオはサンデーサイレンス代表産駒のスペシャルウィークの娘として生まれ、交配相手がサンデー肌であれば無理なくSSクロスが成立します。サンデー肌の牝馬たちの優秀さを思えば、エピファネイアの成功は約束されていたのかもしれません。遠からず母父ディープインパクトなんて仔も珍しい存在じゃなくなるのでしょう。

しかしサンデーサイレンスはアメリカの二冠とBCクラシックと大レースを勝ちまくった名馬ですが、レース中に相手馬に襲い掛かり噛み付くなど、その父ヘイロー譲りの気性の烈しさは有名で、彼の産駒たちも気性の危うさをしばしば指摘されてきました。しかし偉大なサンデーサイレンスは世界にも稀な大成功を成し遂げたのですから、その現在への蘇(よみがえ)りを期待して、サンデークロスの冒険にチャレンジしない手はありません。前述の3頭のG1ホースはいずれも「サンデーサイレンス4×3」の配合構成で、世にクラシック馬輩出の血と伝えられる“奇跡の血量”になります。

土曜阪神のエリカ賞を新馬戦に続き2戦連続のレコード駆けで飾ったサトノヘリオスが注目されています。父エピファネイア、母エアマグラダ、その父サンデーサイレンスの血統で、「サンデーサイレンス4×2」と危険水域にかなり踏み込んだ配合になっていますが、父から授けられたロベルト系らしい良い脚を長く使えるステイヤー資質と日本特有の高速馬場にも難なく対応できる上質なスピードとの融合に、タダモノとは思われぬ大物感が漂っています。無事に、そして大きく育ってほしいと願わずにいられません。この「サンデーサイレンス・クロス」、実は日本競馬がさらに大きく成長し、世界の頂点をめざすための「宝物」なのかもしれません。大事にしたいですね。