2021.12.14

王者の風格

現2歳世代が迎えた最初のG1レース・阪神ジュベナイルフィリーズは、G3・アルテミスSに続いてサークルオブライフが、とても2歳牝馬とは思えない落ち着いたレース運びを披露し、余裕すら感じさせる末脚で抜け出しました。直線に向いて一瞬だけ進路を躊躇(ちゅうちょ)したものの、そこでひと息入ったのが逆に良かったのか?馬場の良い外を10秒台ラップで伸び伸びと力強く走り抜けました。1番人気のナミュールが大きく出遅れて、最後は脚を取られそうな内ラチ沿いギリギリに突っ込むしか進路がなかったのとは正反対でした。コンマ2秒のタイム差ほどの力の差はないかもしれません。

それにしても、エピファネイアの血の規格外の勝負強さには唸るしかありません。生産者の皆さんの人気のバロメーターでもある種付け料は、スタッドイン以来、250万円から500万円、そして1000万円と倍々ゲームで高騰しているのに、種付け頭数は常にブックフル(満口)状態で200頭台を安定してキープ。来シーズンは1800万円と日本生産界の頂点に立ちます。しかし驚かされるこの急騰ぶりも、ほんの通過点に過ぎないのでしょう。

来季も既にブックフルと伝えられますが、どれだけ値上げをしても追いつかない鰻登りの大人気の秘密は、言うまでもなく大物輩出の風にあります。ここまでに重賞レースで延べ4頭が9勝を上げています。9勝中6勝をG1が占め、その占有率は66%超というアンビリーバボーな(信じられない)ハイアベレージです。エピファネイアを生み出し育て上げたノーザンファームの皆さんは彼の幼少時から「アイツは怪物だから」と畏敬の念を持って接するのが常だったようです。「栴檀(せんだん)は双葉より芳し」と古人が伝えるように、「世にも貴重な香木に育つような栴檀の木は幼い頃から並外れた香りを漂わせるものだ」との故事をそのまま姿にしたようなサラブレッドだったのでしょうね。

デアリングタクト、エフフォーリア、サークルオブライフの顕著な共通点は、一目瞭然、サンデーサイレンス4×3のクロスにあります。エピファネイアの3世代G1制覇の原動力は、ロベルト系のここ一番で爆発させる重厚な底力をサンデーサイレンスの軽やかで伸びやかなスピードが牽引しているのでしょう。ロベルト系はブライアンズタイムやグラスワンダーなどを通じてパワータイプの大物を送り出してくれましたが、神話的なレベルで高い日本適性を誇ったサンデーサイレンスのアシストを得て、今後は新しい神話を紡いでいくのでしょうか?今週はサークルオブライフにとどまらない躍動を見せました。前日の土曜阪神芝2000mの1勝クラス・エリカ賞をレコード勝ちしたサトノヘリオスも王者エピファネイア輩出の逸材です。こちらはサンデーサイレンス4×2と近親交配のギリギリまで妥協なく追求した配合になっています。この小さくないリスク回りを含めて、次回はもう少し詳しく見ていきたいと思います。