2021.12.06

世代交代

JRAのダート頂上決戦、“師走名物”G1チャンピオンズCは、4歳世代のテーオーケインズが道中ヒッパリ切りの手応えから、直線で追い出されるとアッという間に後続を引き離して、前年のチャンピオンでありドバイワールドC2着の国際的実績を誇る強豪チュウワウィザードを、余裕で6馬身置き去りにする圧勝を飾りました。彼が属する2015年生まれの現6歳世代は、日本のダート競馬シーンでは、近年最強と断言して良いほど粒揃いの強豪連中が覇を争っていました。

デビューから3連勝でG1全日本2歳優駿でG1初勝利を飾ると、向かうところ敵なしの快進撃でジャパンダートダービー、古馬初対戦のマイルチャンピオンシップ南部杯、頂上決戦チャンピオンズCとG1レースを総ナメにしたルヴァンスレーヴの怪物ぶりは忘れられない思い出ですが、その“怪物”を取り巻くメンバーも飛び抜けて強い傑物が揃っていました。まずはオメガパフュームでしょうか。宿敵ルヴァンスが脚部難に苦しむ中でG1東京大賞典3連覇など“最強世代”の名誉を護り抜いた彼は、ジャパンダートダービーでルヴァンスの2着に敗れ短い夏を越した9月下旬、初の古馬挑戦となる阪神のG3シリウスSで大金星を挙げます。しかし、これは最強世代の驚くべき快進“劇”のほんの序幕に過ぎませんでした。

その3日後には金沢に再びサプライズが起きます。グリムが白山大賞典をレコード勝ち。この世代の傑出した底力が世に知れ渡ります。先述のルヴァンスレーヴの“怪物働き”はご承知の通りですが、他馬も負けず劣らずでG3カペラSをコパノキッキング、G2名古屋グランプリをチュウワウィザードが制すると、トドメは暮れの大一番G1東京大賞典でオメガパフュームが栄光の3連覇へスタート、中央も地方も数々の重賞レースを3歳馬が席巻したのはビックリでした。チュウワウィザードはじっくり仕上げられて3歳2月にようやくデビュー。ジワジワと地力を強化し、暮れも押し詰まったイヴ当日、G2名古屋グランプリで重賞初挑戦にこぎつけ、嬉しいクリスマスプレゼントを自らに捧げます。そこからも晩成の血を徐々に開花させ、故障に泣いたルヴァンスに代わる世代の総大将としてダート界を牽引しました。

その総大将の“首を獲る”大手柄を立てたテーオーケインズの今後のさらなる充実にも熱い注目が注がれます。現4歳世代はジャパンダートダービーで父アメリカンファラオに世界初のG1勝利をもたらしたダノンファラオ、同じ血統でフェブラリーSを制したカフェファラオが代表格とされてきました。テーオーは4歳になった今春、やっとオープン初勝利を挙げた遅咲き。ところがアレヨアレヨで春のダート王決定戦G1帝王賞までもぎ取る異例の出世を果たし、チャンピオンズCでは世代交代を告げる雄叫びを轟かせています。

年度代表馬など活躍馬表彰の季節になりましたが、ダート王を顕彰する「最優秀ダートホース」には、ほぼ毎年のようにチャンピオンズC馬が推されることが不文律のようになっています。百歩譲って仮にそうでなくても、テーオーケインズの猛者ぶりは冠にふさわしいモノですが、今年は世界の頂点を極めるブリーダーズカップに遠征して、堂々と女王のティアラを戴冠したマルシュロレーヌが何とも重たい存在です。明日以降、このあたりを考えてみたいと思います。