2021.11.19

“王道”を志す

今年からG2に昇格する東京スポーツ杯2歳Sに出走するレッドベルアーム、彼が先週行われたG2デイリー杯2歳Sに登場するのを、実は内心で心待ちにされていた会員の皆さん・ファンの方々も多かったのではと想像します。というのも、ベルアームは一昨年、昨年とこのレースを兄弟連覇したレッドベルジュール・レッドベルオーブの異父弟であり、もし出走していれば同一重賞を同一調教師によって三兄弟三連覇という世にも珍しい金字塔を樹立したかもしれないからです。母レッドファンタジアにとっても、リディル・クラレントの連覇兄弟を送り出した母エリモピクシーを超える名繁殖馬として歴史に名を刻む好機、競馬の神様の贈物でした。

ところが藤原英昭調教師は、ベルアームに1週間後の東京競馬場への移動を命じます。G2東京スポーツ杯2歳Sが待っているからです。ご承知のようにダービーが行われる競馬場で行われる唯一の2歳中距離重賞レースであり、創設来25年と歴史は浅いのですが、ダービー馬輩出の宝庫として名を轟かせています。ちなみに第1回の出走馬から皐月賞&ダービーの二冠馬サニーブライアン、第2回の勝ち馬キングヘイローは福永祐一騎手とのコンビで皐月賞2着などクラシック有力候補を次々と輩出しました。とくに最近10年間の東スポ杯経験馬のクラシック実績は凄まじいものがあります。ディープブリランテに始まって昨年の三冠馬コントレイルまで、ダービー馬を実に4頭も量産しています。皐月賞のイスラボニータ、今年の菊花賞馬タイトルホルダーもこのレースから生まれました。ローズキングダムやスワーヴリチャードのように後に東京コースでジャパンCを勝つような馬も出ています。

2歳のこの時期に東京コースを経験させて、賞金加算した馬は後々のローテーションも無理のないものとなり、調教師の先生方の思惑通りの仕上げでクラシックに臨めるということでしょうか?サニーブライアンのように着外に敗れてギリギリでクラシックに滑り込み大一番をもぎ取った馬もいますが、このレースから発する道は、いわば“王道”というべきでしょう。同じ東京競馬場で行われるダービーへと続く“帝王学第一章”がしたためられているとさえ思えるほどです。

藤原先生が育てた今年のダービー馬シャフリヤールは、10月下旬のデビューでこのレースには間に合いませんでしたが、二走目は同じ東京1800mのG3共同通信杯。ここでは無理をさせず好敵手エフフォーリアの脚を眺める形で3着にまとめています(このキャリアが、後のダービー直線の逆転劇の伏線になったのは疑いようもないでしょう)。今やダービートレーナーとしての風格すら漂わせる仕上げぶりです。シャフリヤールの主戦であり、ワグネリアン・コントレイルでもここから頂点まで駆け上がったダービージョッキー福永祐一騎手とのコンビは心強い限りです。勝負ごとに予断は許されませんが、名伯楽と名手にすべてを託し、明鏡止水さながらに、そのときを待ちたいと思います。