2021.11.09

フランケルの種付け料

シーズンが閉幕したヨーロッパ、ブリーダーズカップの大一番を終えたアメリカでは、来年の繁殖シーズンに向けて主要スタッドから来季種付け料が発表されるなど、“ポスト・シーズン”の動向が活発化しています。

中でも10年連続リーディングサイアーを死守し続けた帝王であり父でもあるガリレオを、真っ向勝負で打ち破り新チャンピオンに輝いたフランケルの動向が注目されていました。ヨーロッパの二大人気種牡馬を独り占めにするジュドモントファーム(バンステッドマナースタッド)は、このほど来季の種付け料を発表し、大注目のフランケルは2.5万ポンドの値上げで20万ポンド≒3080万円、人気急上昇キングマンは据え置きの15万ポンド≒2300万円となります。

現在、ゴドルフィンが保有するドバウィが25万ポンド≒3800万円と欧州随一を誇っており、先日のブリーダーズカップでは3勝を稼ぎ出す活躍でした。このガリレオ亡き後の王者のフィーは、来季も上がることはあっても下がることはないでしょうから、この分野でのチャンピオンの座は少しお預けですね。とは言え、今季のフランケルの勢いは疾風怒濤の如く、なにしろ凄まじいものがありました。ドバウィという隠れもない大エースを所有するゴドルフィンが、近年に至ってフランケルとの交配に意欲的に取り組み、ガリレオ以来20年ぶりの英ダービー&キングジョージのダブルビッグタイトルに輝いたアダイヤー、さらに僚馬ハリケーンレーンも愛ダービー&仏パリ大賞&英セントレジャーをぶち抜いて2400m級のチャンピオン路線の覇権を独占しかねない勢いを見せつけました。話題性では少し地味ですが、アルピニスタは“2400m王国”ドイツに遠征して、ベルリン大賞、オイロパ賞、バイエルン大賞と3つのG1レースを勝ちまくっています。その中には後の凱旋門賞馬トルカータータッソを撃破した大金星もありました。

種牡馬入りしたフランケルは、12万5000ポンド≒1900万円から17万5000ポンド≒2600万円と種付け料が値上げされる毎に新境地を切り拓き、次々とフレッシュな魅力を打ち出して来ています。これまでは並外れたスピードで圧倒する自身の荒々しいレースぶりと比べて、一皮むけて距離延びても対応できるクレバーな(賢い)魅力を打ち出して来ましたが、今季はさらに進化して2400m級で底力を発揮するステイヤーの風貌を深めて来たイメージもあります。

もともと初年度産駒ソウルスターリングが、フランケルにとっては世界初のG1馬だったわけですが、祖父サドラーズウェルズ、父ガリレオと競馬の世界史を書き換えた偉大な血統が、唯一日本だけで遂に通用しなかった事実を振り返れば、フランケルの“進化力”というのは神業とすら思えて来ます。この才能を発掘した藤沢和雄調教師はじめ、日本のホースマンの貢献は競馬史に書き残されるべき価値があるのではないでしょうか?さて、種付け料20万ポンド≒3080万円と大台をクリアした今後は、どんな新しい可能性を掘り起こすのか?楽しみと言う以上に、空恐ろしさが漂うようです。