2021.10.12

世界最強軍団ゴドルフィン!

ヨーロッパ競馬は、今月初めのフランスで盛り上がった凱旋門賞ウィークエンドでクライマックスに達し、アイルランドは既に平地主要レースがほぼ終了し、熱心なファンが待ちかねた障害シーズンが始まります。イギリスはやや遅れて先週と今週の2週間に渡って、今季1年間の総決算として各カテゴリーの王者を決めるチャンピオンズデーが行われます。先週末はニューマーケット競馬場を舞台に2歳馬の総決算レースが一気に挙行されました。日本で言えば牡馬中心の朝日杯フューチュリティS、牝馬限定の阪神ジュベナイルフィリーズといった世代の頂点を争うG1レースだけではなく、金曜に行われた牝馬デーはG3コーンウォーリスS 1000mに始まり、G3オーソーシャープS 1400mがG1フィールズマイル1600mとともに番組編成され、牡馬中心の土曜開催はG3ゼットランドS2000m、G3オータムS 2000m、G1デューハーストS1400mの順に距離の異なる重賞レースが多彩に組まれ、来春のクラシックを目指す素質馬たちが激突します。

さてチャンピオンズデー前半のハイライトは、今季絶好調ゴドルフィンのロイヤルブルー軍団が、とくに牡馬戦線では独壇場と言って良い凄まじい勢いが爆発しました。レースのスタート順に、距離2000mのG3ゼットランドSをゴールドスパーというドバウィ産駒がゴール前のアタマ+短アタマの競り合いを制して、長めの距離での勝負強さをアピールしました。続く1600mのG3オータムSは、これもドバウィの血コロエバスが地力の確かさを発揮して前走2着のウップンを晴らす快勝を飾りました。G2ロイヤルロッジSでは完全に先頭に立ちながら、ゴール前でクビだけ差し返される油断負け?もう負けられない覚悟が伝わってきました。ダービーの前売り人気で2番人気に急浮上しています。

メインは1400mの伝統の一戦G1デューハーストSでしたが、大本命ネイティヴトレイルが文句のつけようがない競馬でポテンシャルの違いを見せつけました。これで前走のアイルランドでのG1ナショナルSに続いて負け知らずの4連勝です。ダービーの前評判は、父ケープクロスの血統から距離を不安視されて、クールモアのルクセンブルクや僚馬コロエバスに一歩譲っていますが、スピードが生きる2000ギニーは他を寄せ付けない人気に支持されています。フランケルの血を取り込んだアダイヤーとハリケーンレーンの大向こうを唸らせる活躍を中心に今年の世界競馬シーンをリードして来たゴドルフィン勢ですが、チャンピオンズデーの重賞3戦3勝は来シーズンのさらなる進化を予感させるものです。

今年のチャンピオンズデーで目立ったのは、ゴドルフィン軍団の長期的な戦略眼でした。ゴールドスパーの鞍上はジェームズ・ドイル騎手で、コロエバスとネイティヴトレイルにはウィリアム・ビュイック騎手が手綱を執っていました。最終的にはレースの使い分けも選択肢でしょうが、長い目で先々を考えての役割分担には感心させられます。それに加えて最近は、かつて90年代前半から2000年代にかけてゴドルフィン帝国の第1次黄金期に主戦ジョッキーとして輝きを一身に集めていたランフランコ・デットーリもジョン・ゴスデン厩舎のゴドルフィン所属馬を中心にロイヤルブルーの勝負服を着用するようになっています。このトリオが来季のG1戦線で実現するようなら、世界最強のジョッキー陣と胸を張れそうです。

今週末は先週のニューマーケットとは趣きを変えて、3歳以上の完成されたサラブレッドがアスコット競馬場に一堂に介して、近い将来のG1昇格を期待されているG2チャンピオンズ・ロングディスタンスC3200m、G1チャンピオンズ・スプリントS1200m、牝馬限定のG1チャンピオンズ・フィリーズ&メアズS2400m、G1クイーンエリザベス2世S1600m、そしてチャンピオンの中のチャンピオンを目指すG1チャンピオンS2000mと、それぞれカテゴリー別に“ブリティッシュ・チャンピオンズ”の戴冠を競います。大一番のオンパレード、見逃せません。