2021.10.07
ダート世界選手権への試み
IFHI(国際競馬統括機関連盟)は、サウジアラビアとバーレーンを「パート3国」から「パート2国」へ格上げするとともに、両国の国際基準を満たしたレースについて国際グレードを付与することを決定したそうです。発表によると、サウジアラビアの賞金総額2000万ドル≒22億円の賞金世界一を誇るサウジカップ=ダート1800m=をこれまでの未格付けからG1に、遠征帯同馬などの受け皿として開催されるアンダーカードのサウジダービーなどをG3格付けします。これらG3レースでも、総賞金100万ドルオーバーの“ミリオンレース”がズラリ!森秀行厩舎のフルフラット、ピンクカメハメハの日本調教馬コンビが連覇中のサウジダービーは今年が総賞金150万ドル≒1.6億円、来年は250万ドル≒2.75億円に増額、並のG1を軽く超える超豪華版となっています。
言うまでもなく、競馬の質は賞金額の多い少ないで決まるものではありませんが、ダート領域でのチャンピオンシップは、おおむね下記の4つのレースの内容を基準にジャッジされ、その評価内容がレーティングに反映され、世界のホースマンから広く認められ共有されています。異見異論はあるでしょうが、一般的に高額賞金に対するモチベーションが、強い馬の出走意欲を高め、強い馬が集まれば集まるほど、そのレースレベルも掛け算的に膨れ上がっていきます。現時点の“ダート世界選手権”シリーズを構成すると考えられているハイレベルレースは以下の4つです。
*11月初旬=G1BCクラシック(1着賞金312万ドル≒ 3.4億円)
*1月下旬=G1ペガサスワールドC(1着賞金300万ドル≒ 3. 3億円)
*2月下旬=G1サウジC(1着賞金1000万ドル≒11億円)
*3月下旬=G1ドバイワールドC(1着賞金696万ドル≒7.6億円)
このダート世界選手権シリーズに、我が日本が積極的に参入を果たすとしたら、時期的には12月のどこかという選択肢が、もっとも理に叶っているように思えます。そこしかないと言って良いでしょう。幸いに12月初頭にはダートG1のチャンピオンズCが組まれていますが、残念ながら近年は存在感が希薄化する傾向も見られます。昨年のチャンピオンズC馬チュウワウィザードがドバイワールドCで2着に検討したように、レース価値自体は広く世界に認められ始めており、ここは現在1億円の1着賞金をせめて同3億円のジャパンC並みにドンと弾むのはもちろん、レース名も誰にも分かりやすい創設時の「ジャパンCダート」に戻すなどの改称も含めて、レースの本質的な存在意義や目的なども再度精査し、“ダート世界選手権”の一環としてポジショニングし直す方向性も検討のテーブルに乗せてもらいたいですね。
お国柄や民族的な伝統文化が形づくるそれぞれの個性が消滅することはありませんが、いずれ遠からず競馬もグローバル化の波から逃れられません。そうでなければ生き残ることができないからです。日本競馬界はダートの領域で、競馬の世界的トレンドのリーダーシップを率いたことはありませんが、競馬マネジメントに関しては革新的な先進国であり、その第一人者ではないでしょうか?コロナ禍にあっても、ごく一部の地方競馬を除けば、1日たりとも開催を休んだことはなく、1レースたりとも中止したことはありません。無観客競馬という逆風の中でも、ファンの気持ちに丁寧に真摯に寄り添うことで、結果的に売り上げを落とすこともありませんでした。これは“コロナ禍の奇跡”と言って良いのではないでしょうか。驕ることなく、謙虚にかつ真摯に、競馬という最高の“人生の愉しみ”と向き合っていきたいと願うばかりです。