2021.10.06

父子4代G1制覇の偉業

まだ先の話になりますが、G1スプリンターズSを快勝したピクシーナイトが種牡馬入りすると、日本調教馬の血を繋ぎ続けて4代目になります。日本で有名なのは、ステイヤーの血を繋いだメジロ一族のアサマ、ティターン、マックイーンと父子3代の天皇賞制覇&種牡馬入り、逆にスピードに特化したサクラユタカオー、サクラバクシンオー、ショウナンカンプとスプリンター血脈の3代継承でしょうが、4代となるとかなり珍しいレアケースと言えそうです。

ご承知のように、アメリカ生まれながら朝日杯3歳S、有馬記念、宝塚記念、有馬記念とグランプリ 3連覇を含めてG1を4勝したグラスワンダーに始まって、ジャパンカップでジャイアントキリングを果たしたスクリーンヒーロー、そして日本と香港で1600mと2000mの2階級をまたいでG1をそれぞれ3勝ずつ戴冠した国際派モーリスからピクシーナイトへと至る父子4代に渡るG1制覇は史上初の金字塔だそうです。しかもそれらの距離を俯瞰して見ると1200m、1600m、2000m、2200m、2400m、2500mと実に6種類にも及び、カテゴリーに集約すれば何と“5階級制覇”に達するという常識破りの破天荒さです。

このあらゆる可能性を詰め込んだような父系に加えて、ピクシーナイトは母系から高松宮記念のキングヘイロー、スプリンターズS連覇のサクラバクシンオー、アメリカン・スプリントの至宝オジジアンと良質なスピード血脈を注ぎ込まれています。デビューから全戦の手綱を福永祐一騎手が握り続け、ピクシーの個性に磨きをかけ続けて来ました。とくに夏場からスプリント路線に照準を絞ってからは「G1しか見ていない!」とスプリンターとしての大成をひたすら目指して来たものです。父のモーリス、そのまた父のスクリーンヒーローは、ともに転厩を経て超大物に“化けた”馬でした。人とのコミュニケーションにおいて、デリケートで細やかな気配りが必要なタイプかもしれません。その意味で福永さんとの出会いは、天の配剤だったという気がしてなりません。

父モーリスは日本産サラブレッドの総本山・社台スタリオンステーションにスタッドインして、ポスト・ディープインパクト&キングカメハメハの後継として大きな期待をかけられ、日本ばかりかオーストラリアにシャトルしたりと大活躍しています。しかし今シーズンの種付料は800万円と前年から倍増したもののライバルには一歩遅れをとりました。実績で優るロードカナロアが1500万円でスタリオンリーダーの座に就いたのは当然としても、同期のドゥラメンテ、1年先輩のキズナとエピファネイアが種付料1000万円とカナロアの脇を固めていることを思えば、ちょっぴり物足りないのが本音です。しかしピクシーナイトの大殊勲の手柄もあって、昨年産駒がデビューした種牡馬では、G1勝ちは同期の一番乗りを果たしました。今後の産駒たちの大奮起も含めて、ポスト・ディープ&キンカメの白熱した戦いが面白くなってきそうです。