2021.09.21
父子鷹
秋競馬がスタートして2歳戦が数多く組まれるようになっています。芝中心だった番組編成がダート戦にも相当数が振り当てられ、これまで芝を使わざるを得なかったダートホースも本領発揮で陽が当たる機会に恵まれるようになっています。そんな番組編成の変化を背景に、この週末の3日間開催のハイライトを探ってみました。今年はまだ2歳リーディングサイアーランキングでベストテン入りすることすらなく、野に伏せて雲とともに天空へと飛翔する時季を待っていた巨龍ディープインパクトがお目覚めの季節を迎えたことでしょうか?
3日間で4勝、固め打ちというより、やっと平年並みのペースに戻った印象ですね。まだデビュー戦を消化した程度の馬が多く、賞金の高い上級レースや重賞で稼ぐのはこれからですから、ランキングは現在9位にとどまっていますが、勝ち馬数11頭・勝利数11勝はトップですから、まだ大きな伸び代があります。重賞が次々と開催される秋のうちには、いつものように一捲りでリーディング首位に立っているのでしょうね。初年度産駒が競馬場にデビューして10シーズンを過ごしていますが、これまで9シーズンで2歳チャンピオンサイアーに輝きました。唯一の王座陥落は、2015年に快速メジャーエンブレムなどを擁するダイワメジャーが、仕上がり早くマイルまでならドント来い!の飛び抜けた早熟性で不覚をとっただけです。それはさて置き、ダイワメジャーの世界に通用する早熟性はもっと高く評価されて良いと思います。
ディープインパクト本尊の“お目覚め”は頼もしい限りですが、ディープ2世からも目が離せません。既に実績を積みつつあるキズナは無論、シルバーステート、ミッキーアイルなども期待以上の走りを披露しています。数少ない産駒ながらヴァンキッシュランも、目を瞠(みは)らせる活躍を続けています。セレクトセールの常連として高名な島川隆哉さんが2億円近くで落札したヴァンキッシュランは、ディープインパクト×ガリレオ牝馬のワールドクラスの配合で、青葉賞を快勝するなど2400mで奥深さを発揮し始めたものの、無念にも屈腱炎で引退します。引退後は島川さん創設のエスティファームのプライヴェート種牡馬に迎えられます。今年デビューの初年度産駒はわずか9頭しかいません。これまでにJRAで2頭が初陣を飾っており、トーセンヴァンノは初勝利が格上挑戦のOPコスモス賞、さらにG3札幌2歳Sで3着と母父ガリレオの重厚な血が距離延びて良さを醸し出して来たようです。こうした底力は産駒全体に伝えられているようで、地方岩手に入厩したギャレットは芝レースが地方唯一組まれている盛岡の重賞・若鮎賞で初勝利を飾りました。昨日の重賞ジュニアグランプリでも2着を死守、東北競馬のホープにのし上がりました。JRAに戻ると、トーセンギャレットは2戦目のダート1200mでアッサリ。トーセンヴァンノと2頭で“2-2-2-1”と素晴らしいスタートダッシュを見せています。これだけ中身が濃い走りを見せるようだと、エスティファーム専用というのはモッタイないですね。
ヴァンキッシュランが注目されているのは“アーニング・インデックス”の飛び抜けた優秀さゆえでしょう。“アーニング・インデックス”とは、出走全馬の1頭あたり獲得賞金を『1』として、各種牡馬毎の1頭あたり獲得賞金を算出したものです。一般的には『1』以上なら“走る血”であり、『1』以下なら遠からず“淘汰される血”と評価されます。リーディングのランキングは獲得賞金の総計で順位付けされますから、出走頭数が多いメジャー種牡馬に有利ですが、アーニング・インデックスは頭数にかかわらず競走内容の質が評価されるためマイナー種牡馬にも出番があります。JRAの今年の2歳戦に1頭でも産駒を送り込んでいる種牡馬は180頭余りになりますが、ちなみに現時点で2歳リーディング1位のドレフォンは、アーニング・インデックス1.56と優秀な数値を残しています。現在9位のディープインパクトは1.87ですから、やはり走りますね。しかし全体の順位はディープインパクトが24位、ドレフォンが34位と頭数が増えれば産駒の質にバラツキが出るのは避けられません。180頭余りの頂点に立っているのがディープインパクト系の新種牡馬ヴァンキッシュラン!アーニング・インデックスは9.26と2位に倍近い稼ぎっぷりを見せています。父ディープインパクトともども“父子鷹”の飛翔へ大きく羽ばたき、高く舞い上がって欲しいものです。