2021.09.10
ドレフォンの芝適性
ブリーダーズカップ・スプリント(ダ1200m)の金メダルを手土産に日本へやって来たドレフォン。産駒が競馬場に姿を現すと芝でも軽やかな動きを披露し、先週はジオグリフがG3・札幌2歳Sをひとマクりで2着以下を4馬身突き放す強い競馬を見せてくれました。その前のデビュー戦が東京で先行し、上がり33秒3の切れ味で鮮やかに抜け出しています。単なる“洋芝巧者”にとどまらず、丁寧に造成された東京の高速コースでも自在に動ける本来の“グラスホース”なのでしょう。ここまでJRAでは6頭が合計7勝を挙げているドレフォン産駒ですが、芝5勝・ダート2勝の内訳は、ダート番組数の少ない時期であることを差し引いても芝のパフォーマンスは太鼓判が押せそうです。
その父ジオポンティからテイルオブザキャットを経てストームキャットへと遡るドレフォンの血は、惚れ惚れさせられる見栄えの良い好馬体の割にはパワータイプより手先の軽い芝向きのスピードタイプに出る仔が少なくないようです。実際、ジオポンティはアメリカ屈指の“グラスホース”として存在感を誇示しました。北米の優良馬を顕彰するエクリプス賞の芝牡馬チャンピオンに二度輝いていますが、今年で50年目を迎える歴史に二度以上名前を刻んでいるのは、“伝説の名馬”ジョンヘンリー、ヨーロッパからの遠征馬ハイシャパラル、“奇跡の騸馬”ワイズダン、そしてジオポンティの4頭だけです。その内容も素晴らしく、芝の1600m〜2400mと幅広い距離でヨーロッパG1最多勝利記録を打ち立てた女帝ゴルディコヴァに真っ向から立ち向かうなどレベルの高いレースを繰り広げ、G1を7勝したのは立派のひと言です。
こうした芝適性の優秀さにとどまらず、当時はAW(オールウェザー)で開催されていたUSA最高峰のBCクラシックにも挑戦し、無傷の白星街道をひた走っていたゼニヤッタの2着に食い下がり、ダートのドバイワールドCには二度チャレンジして、いずれも掲示板を外さない堅実な走りを見せました。芝は無論のこと、ダートやAWなど馬場形態を問わず能力を発揮するポテンシャル自体の高さを認めないわけにはいきません。
さて、今週は舞台を中山に戻して“出世レース”の趣も深いアスター賞に、ドレフォン軍団から白馬ハイアムズビーチが登場します。ご承知のように桜花賞馬にして 3歳夏にG2・札幌記念で古馬を完封した白馬ソダシと同じシラユキヒメ一族の出身です。この一族は、見た目にも美しい白毛という物珍しさだけなく、メイケイエールなど鹿毛に出ても3歳の現在までに重賞3勝の働きぶりです。もはや白毛ファミリーというより、わが国屈指の名牝系に育ちつつあると考えるべきでしょう。アスター賞は歴史の浅い条件レースですが、後にヴィクトリアマイル、香港Cと国内外G1を勝ったノームコア、阪神JF、NHKマイルCと傑出したスピードが忘れられないメジャーエンブレムなど頂上へと昇り詰めた名馬を出しています。ハイアムズビーチは雄大なフットワークで、ここも通過点のひとつとして悠々と駆け抜けてくれるでしょう。