2021.08.30
群雄割拠の夏
長く感じられたサマー競馬も、今週の札幌2歳S、小倉2歳Sを大トリに、いよいよフィナーレを迎えます。クラシックロードの出発点を前倒した番組編成の影響か、最近は夏競馬をクラシックへの登竜門としたいと考える陣営も増えたのでしょうか?この週末は、“大物風”の威風堂々たるレースっぷりを披露する素質馬が躍動しました。中国4000年を綴る故事に、“群雄割拠”という有名な言葉がしばしば出てきます。個性さまざまな英雄たちが各地を拠点に勢力を拡大し、せめぎ合いながら頂点を目指す様子を言い現したものです。早くも開かれたクラシックの狭き門への扉に、若き群雄たちが殺到する図を見る思いがします。
土曜小倉未勝利2000mのキラーアビリティは、やや行きたがる素振りを見せましたが、後方に下げると巧く折り合い、いざ追い出されるとラスト2ハロンを11秒8-10秒8と猛加速、一瞬で7馬身ちぎるレコード駆けは将来の飛躍をたぐり寄せました。不動の2歳リーディング王ディープインパクトの血ですが、これで4勝目とスタートダッシュはイマイチの現状です。内2勝を挙げている東サラ軍団にあやかりたいものですね。例年、秋口からのロングスパートで捲り切るタイプですから、これからが本領発揮なのでしょうが。
土曜新潟1800mのイクイノックスも強かったですね。父キタサンブラックは、母父サクラバクシンオーから距離的性を疑問視される時期もあったのですが、菊花賞、天皇賞(春)を苦もなく踏破するスピードとスタミナは超一級ステイヤーのそれでした。イクイノックスも良い脚を長く使って6馬身突き放す圧勝でした。大物ステイヤーに育つ風貌が漂います。新種牡馬としては地味な存在のキタサンブラックですが、自身の現役時と同じく、風評を遥かに超える底力を隠していると思えてなりません。
札幌ではダート1700mをクリノメガミエースが、1番人気ララランドの落馬の影響もあり道中半ばから先頭に立つと、そのまま逃げ切り8馬身差。父エスポワールシチーは今季JRA初勝利ですが、地方では2歳リーディングのトップを独走している勢いは無視できません。日曜は新潟ダート1200mのインコントラーレの9馬身ぶっちぎりが圧巻でした。“テン良く中良くシマイ良し”を絵に描いたようなバランスの良いレースぶりで、良馬場1分11秒1は、不良馬場でのコースレコードにタイ。父マクフィはG3アイビスサマーダッシュで強い勝ち方をしたオールアットワンスなど短い距離で良い味を出していますが、孫のミシュリフはダートと芝の双方で中長距離のビッグレースを勝ちまくっている二刀流、配合や調教次第では“異次元の怪物”を輩出して不思議のない血統でしょう。