2021.07.28
同一レース5連覇の大偉業
イギリスでは“グロリアス・グッドウッド”開催がスタートしました。舞台となるグッドウッド競馬場は、日本人ファンには一昨年のディアドラの大殊勲金メダルや昨年はディープインパクト産駒ファンシーブルーが勝ったG1ナッソーSでお馴染みです。テレビ中継を通してご覧になった方も多いでしょうが、天空に浮かぶように横たわる丘の中腹に幻想的に広がる世にも美しい競馬場です。2マイル≒3200mのマラソンレースが周回なしに施行でき、直線1000mと雄大なスケールを誇りますが、ほぼ平坦でレースを一望できる観戦勝手の良さも魅力です。
歴代イギリス王室きっての“競馬好き”で知られるエドワード7世は、この“グロリアス・グッドウッド”の5日間を「競馬も楽しめる園遊会」と表現しています。王侯貴族の皆さんは、クラシック開幕のニューマーケットに始まって、オークス&ダービーのエプソム、ロイヤルアスコットに続いて夏のグッドウッドを歴訪するのを毎年のルーティンとして満喫されたようです。そもそも競馬が王侯貴族の優雅なライフスタイルの一環として組み込まれ愛されて来た、その原点に思い至らせるエピソードです。
エドワード7世は平地の三冠馬ダイヤモンドジュビリー、障害のグランドナショナル馬アンブッシュなど数々の名馬のオーナーブリーダーとして名を馳せ、そもそも皇太子だったウェールズ公時代に現在のG1プリンスオブウェールズSの創設に関わり、“アスコットダービー”とロイヤルアスコットのラインナップを彩るG2キングエドワード7世Sに、その威名を残しています。様々な威光に包まれたエドワード7世ですが、オーナーブリーダーとして積み重ねた通算勝利数では、現女王のエリザベス2世陛下には太刀打ちできないようです。女王の“競馬好き”もさすがです。
さて、エドワード7世が愛した“グロリアス・グッドウッド”、今年の見どころは、同一重賞5連覇の金字塔樹立がかかる馬が2頭も登場することです。同一重賞5連覇は日本では障害のオジュウチョウサンがJpn-1中山グランドジャンプで達成していますが、平地では3連覇が最高で4連覇も未踏の領域とされています。それほど大変な偉業です。この聳え立つ難関にチャレンジするのは、初日からG1グッドウッドC 3200mに臨むストラディヴァリウス、4日目金曜のG2キングジョージS1000mに挑むバターシュです。超長距離と超短距離の両極端で偉業挑戦が見られるのも、ますます興味をそそります。ストラディヴァリウスは、グッドウッドCがG1昇格した年から勝ち続けています。G1グッドウッドCは彼の別名のような存在です。しかし残念にも彼を管理する名匠ジョン・ゴスデン師は道悪馬場を嫌って直前にスクラッチ。偉業達成は幻となりました。もう1頭の“グレート・チャレンジャー”バターシュへの期待が高まります。そのあたりは明日お伝えします。