2021.07.26

今年の欧州は3歳が強い!

真夏の新潟名物・G3アイビスサマーダッシュは、若駒オールアットワンスが“千直王”ライオンボスなど歴戦の古馬を寄せ付けない堂々の走りで、見事に勝利を飾りました。3歳馬の勝利は06年のサチノスイーティー以来15年ぶりになります。古馬牡馬の56キロ、馬によっては賞金加算で57キロを背負うのに対し、3歳は53キロ、牝馬はそれぞれ2キロ減の恩典があり、オールアットワンスは51キロの“恵量”でライオンボスとは6キロ差がありました。

とは言え、成長盛り3歳馬の充実は想像を超える劇的なパワーが秘められています。とくに今年のヨーロッパでは3歳馬の強さがG1シーンを圧倒しています。初夏の風物詩・ロイヤルアスコットが幕を閉じ7月の声を聞くと、ヨーロッパのG1戦線はクラシックシーズンから古馬と3歳馬が同じ土俵で戦う頂上決戦シリーズへと舞台を移します。その第1弾が7月初旬にサンダウンで行われるG1エクリプスS。古馬60.5キロ、3歳56キロ、牝馬1.5キロ減のルールですが、ここ2年は古馬に軍配が上がっています。

今年はわずか4頭立てながら、1着1000万ドル≒11億円の世界最高賞金レース・サウジCと1着290万ドル≒3億2000万円のドバイシーマクラシックを連勝した“賞金王”ミシュリフ、イギリスとオーストラリアの最高峰レースを勝っている“国際派”アディブの古馬両雄にフランス遠征で二冠を戴冠して来た“若武者”セントマークスバシリカが挑戦するという興味深い対決となりました。レースは古馬両騎が先に抜け出したところへセントマークスが矢のように伸びて一瞬に差し切ってしまいます。アディブに3馬身半、ミシュリフはさらにクビ遅れます。文句のない勝利でした。

先週末のG1キングジョージ6世&クイーンエリザベスSは、ここも5頭立てと寂しくなりましたが、ギュッと締まって中身が濃縮され少数精鋭の印象もありました。G1を4連勝中、もう2年近く敗北を知らず、エネイブル引退後の“新・絶対女王”の呼び声も高いラヴが、今年の英ダービー馬アダイヤーを、前出“賞金王”ミシュリフとともに迎え撃つ一番となりました。古馬60.5キロに3歳55.5キロ、牝馬各1.5キロ減の戦いでしたが、ここも若武者の勢いに凱歌が上がり、完封と言って良い内容の勝利でした。ダービーとキングジョージを勝ち切ったのは、20年前のガリレオ以来とメモリアルな出来事になりました。

この3歳馬優勢の立役者となっているのが、種牡馬フランケルの目覚ましい充実です。アダイヤーを筆頭に、愛ダービーとパリ大賞を連勝しているハリケーンレーン、牝馬路線で台頭して来た良血スノーランタンと次々とG1馬を輩出しています。リーディングサイアー戦線でも“不動の帝王”ガリレオを突き放してトップを独走しようかの勢いがあります。ガリレオは昨年まで11年連続で通算12回のチャンピオンに輝いた“永久不滅”の偉大な種牡馬です。フランケルがその王座を取って代わるのは、日本ならサンデーサイレンスをディープインパクトが倒すようなものです。まだ先は長いので、チャンピオンの逆襲がありそうですが、飛翔するフランケルからも目が離せません。