2021.07.19
ディープ最高傑作の降臨
イギリスでは着差がつき易い道悪とは言え史上最大の16馬身差!アイルランドでは各馬揃ってポテンシャル全開の条件が整った良馬場で116年前の記録に肉薄する8馬身半差!立て続けのサプライズ連発で、競馬を生み育てた母国の人々を仰天させたスノーフォールは、ディープインパクト産駒としては08年生まれの初年度から数えて11世代目になります。その間、ディープインパクトは母国日本でダービー7勝をはじめ、驚異的なスピードで勝ち星を量産し11年連続でリーディングサイアーの王座に輝き、海外でも数々のG1の勲章を手にして来たのはご存じの通りです。
しかし彼が競走馬として、余りにも突出して空前の成功を収めた非凡さゆえに、種牡馬として自分自身を超える産駒を“まだ”出していないなどと言われ続け、理由なく貶められたのは気の毒でした。英オークスで彼女の手綱を執ったランフランコ・デットーリは、直線に入って馬場の良い外ラチ沿いに導いたら次の瞬間に彼女は「飛び立った」と16馬身ブッチギリの独走ドラマの裏側を解説しています。別に事前に打ち合わせたわけではないでしょうが、ディープの主戦・武豊騎手がレース後のインタビューで「今日も飛んだ!」と述べていた余りにも有名なコメントと二重写しになります。
英オークスから愛オークスへ、この44日間で彼女は現時点で、偉大なディープインパクトの最高傑作へ成長したと認めて良いのではないでしょうか?さらに、果たしてスノーフォールは父ディープインパクトの生まれ代わりなのか?ムダなくシェイプアップされた伸びやかな馬体も父に生き写し、父と同じ日本のノーザンファーム生まれの出自という親しみも手伝って、次々と想像が逞しく膨らみます。さて、降臨したディープの最高傑作、次走は英オークス後にデットーリ騎手がエイダン・オブライエン師に進言したと伝えられる“エネイブル・ロード”が待っているのでしょうか?
4年前に名手自らがエスコートして、英オークス、愛オークス、キングジョージ、ヨークシャーオークス、凱旋門賞への道をともに歩んだ名牝と同じ道へ進む才能と資格を手綱越しに確信したからです。オブライエン師はキングジョージは同厩の先輩ラヴに委ねて、スノーフォールには8月中旬のG1ヨークシャーオークス2400mが有力な選択肢としてテーブルに上げているようです。牝馬同士の戦いとは言え強烈なメンバーがエントリーしています。登録済みのラヴは出てくれば、BCターフ快勝以来のタルナワと並んで凱旋門賞でも一貫して上位人気に評価される実力馬です。他にも、粋の良い上がり馬が顔を揃え“ジャイアントキリング(大物喰い)”の機会に虎視眈々。一筋縄では収まりそうにもありません。今年のヨーロッパ戦線は目が離せない面白さがギッシリ詰まっています。