2021.07.16
次代種牡馬王争いの縮図
新馬戦がスタートして6週間が過ぎたところです。今週は函館でJRA2歳重賞第1弾となるG3・函館2歳Sがおこなわれますが、ここまで新種牡馬チャンピオン争いのみならず2歳リーディングサイアー戦線全体でも絶対王者だったディープインパクトや、次代の王者が期待されるロードカナロアなどを押さえ込んで1位のドレフォン、2位のシルバーステートがそれぞれ2頭ずつ出走させてきます。加えて地方の新種牡馬暫定チャンプも自慢の産駒を送り込み、“主役不在”と囁かれる混迷の時代に、次代を占うちょっとした縮図が一望できそうです。
ドレフォンは現役時にはアメリカのダートスプリントチャンピオンでしたが、産駒は4勝中3勝を芝のレースで上げています。それら勝ち上がり距離も1200m~1800mと満遍なく対応しており、この先も2000mくらいならこなしてくれそうです。その血統的背景には、ストームキャット系の“グラスホース”として名を馳せた父ジオポンティの存在があります。彼はヨーロッパからの遠征馬も含めた強敵相手に1600m〜2200mの幅広い距離で芝のG1を7勝しています。仕上がり早く、タフに走ってくれる心身両面の健康さも魅力。ジックリと長い目で見ていきたい血筋です。
シルバーステートは屈腱炎により志半ばで引退しましたが、ディープインパクトの最高傑作級と絶賛する高い評価もある“未完の大器”として根強い人気を誇っています。その“未知の魅力”ゆえか、初年度から200頭近い牝馬を集めるなど生産者からの支持は熱っぽさを増しており、80万円からスタートした種付け料も産駒未出走のうちから年々小刻みでも上昇を続け、今年は150万円と倍近くまで上昇。当分は倍々ゲーム街道を突っ走りそうです。先日のセレクトセールでも1歳馬が2億6000万円(税別)で落札され、現在のスタートダッシュを続けるようなら、来季は倍々どころか常識破りのフィーで話題沸騰となるかもしれません。ただ、現在までは勝利が短い距離に偏っているのが気になると言えば気になります。メリトクラシーは母の父スタースパンクルドバナーから、その父ショワジールの偉業を踏襲してロイヤルアスコットのG1・ゴールデンジュビリーS(現ダイヤモンドジュビリーS)を父子制覇した生粋のスプリント血統の影響を受けているのでしょうが、母系の良さを引き出す種牡馬としての懐の深さと考えることもできます。
一方、地方で新種牡馬ランキングのトップを走るコパノリッキーも、門別から快速ラブミードールを送り込んできました。次代を担う有力フレッシュサイアーの揃い踏みが実現します。盟主不在のターフ界と同じくダート界もクロフネ、サウスヴィグラス、ゴールドアリュール、芝砂二刀流キングカメハメハなど次々と重要な支柱を失い、その後継が一日千秋の思いで待たれています。コパノリッキーはJRAと交流重賞でG1級11勝を挙げて日高記録を塗り替えた期待の新星として、やはりダート主流でしょうが今後の飛躍が待ち遠しいですね。
他ではディープインパクトと母父ガリレオの世界を席巻する帝王同士の組み合わせから生まれたヴァンキッシュランの初年度産駒トーセンヴァンノは、まだ未勝利の身で勝ち切るまではどうかも上位争いなら差は少なそうです。英オークスを16馬身差で圧勝し、凱旋門賞の前売り1番人気に急浮上したスノーフォールが同じディープインパクト×ガリレオの配合でした。スノーフォールは明晩、愛オークスで二冠に挑みます。日英でディープ&ガリレオ祭が見られたら、それはそれで楽しいのですが…。